「発生いたしません」と「発生致しません」。
尊敬語・謙譲語などを使うときに、どちらが正しいのか、気になることはありませんか?
私も気になったことがあり、当初は「大きな差はないだろうし…。」と考えていましたが、いざ気になると、確かめずにはいられなくなり、いろいろと調べてしまいました(笑)。
今回は、「発生いたしません」と「発生致しません」のどちらが正しいのか、意味や由来、例文等を交えながら、分かりやすくまとめてみたいと思います。
「発生いたしません」と「発生致しません」どっちが正しい?
私が調べた限り、結論としては、『何とも言えないところだけど、「発生いたしません」の方がよりベターなのでは?』というところに落ち着きました。
というのも、「謙譲語はひらがなで書かなければならない」といった決まりはないと思ったからです。
「いたす」の意味と使い方
「いた・す」(致)には、主に、他動詞と補助動詞としての意味があると考えてます。
他動詞の場合、「準備を致す」「私の不徳の致すところです」のような使い方でしょうか。
今回の「発生いたしません」において、「いたす」は「する」の謙譲語として使われている認識です。
「いたす」は「する」の謙譲語。自分の動作をへりくだって表現する際に使います。
例文としては、「ご連絡いたします」「準備いたしました」「確認いたしかねます」などが挙げられます。
ここまで見ると、「致す」「いたす」のように、漢字で書く場合とひらがなで書く場合が確かにあります。
「いたす」を漢字で書く(ことが多い)ケース
「いた・す」(致)を動詞として使用する場合は、比較的漢字を使うケースが多いと思います。
「いたす」をひらがなで書く(ことが多い)ケース
「いた・す」(致)を補助動詞として使用する場合は、比較的、ひらがなを使っているケースが多いと思います。
先程の「ご連絡いたします」「準備いたしました」「確認いたしかねます」の部分の「いた・す」(致)を感じで書いてみると…。
- ひらがな→「ご連絡いたします」「準備いたしました」「確認いたしかねます」
- 漢字→「ご連絡致します」「準備致しました」「確認致しかねます」
普段の慣れも大きいと思いますが、やはり、ひらがなの方が読みやすいです。
「謙譲語はひらがなで書かなければならない」といった決まりはない
私たちが普段使っている言葉において、「このように使うべきだ」というようなルールを定めた体系として、正書法というものがありますが、現時点で、日本語にはこの正書法がないみたいです。
日本語は、言葉の表現方法がとても豊かで、同じ言葉でも、それをひらがなで書くか、カタカナで書くか、漢字で書くかなど、文字の種類が多いことから、選択肢が一つに限定されていません。
「この言葉は漢字で書くよね、ひらがなで書くよね」というような大まかな書き方は確かに存在しますが、「このように書かなければならない」といった義務はないと思います。つまり、日本語の使い方というのは、その人それぞれの判断によるところも大きいということだと思うのです。
そのうえで、今回の「発生いたしません」と「発生致しません」ように、漢字で書くか、ひらがなで書くかに関しては、ルール的なもので決められていることはないと思いますが、個人的に、今回のように、その言葉が補助動詞で使用されている場合は「ひらがなで書く」、「発生いたしません」のほうがベターな気がしております。
私たちが日常生活で言葉を使う上で、そこまで厳密にこだわる必要性もないのかもしれませんが、そのうえで、日本語はその人ぞれぞれの判断に基づいて、文字の使い方が変わることが多いため、補助動詞をひらがなで使うと、文字として第三者が見た時に、「見やすい」「誤解しにくい」といった利点があるように思えます。
一種の「思いやり」かもしれませんね。
ただ、現代におけるビジネス文書では、補助動詞はひらがな、動詞は漢字という使い分けが定着しているように感じるのは、実際のところです。
文化庁の基準と公用文での扱い
念のため調べた情報ですが、文化庁が示す「公用文作成の要領」では、補助動詞の「~して来る」「~して見る」などはひらがなで書くことが望ましいとされています。
- 「~して来る」→「~してくる」
- 「~して見る」→「~してみる」
なので、そのようなオフィシャルな場面においては、「発生いたしません」のように、「補助動詞はひらがなで書く」のが推奨されているとも言えますね。
例文で確認
- より望ましい例
- 「ご心配は発生いたしませんので、ご安心ください。」
- 「そのような事例は、今後も発生いたしません。」
- できれば避けたい例
- 「ご心配は発生致しませんので、ご安心ください。」